目次へ戻る

株価はバブル崩壊後の最安値と喚かないで

20021011

宇佐美 保

 マスコミはいい加減にしてください。

マスコミは、“株価はバブル崩壊後の最安値!”と、喚きますが、株価が下がって当然ではないですか!

あなた方は、過去の高値はバブルのためと認識しているのでしょう?

バブルが弾けたら、バブルで高騰した分は、そのままそっくり低下するのは当然ではないですか。

 

 コップに激しくビールを注げば、泡はコップに溢れんばかりとなりますが、やがて、その泡は消えてゆくのが当然です。

なのに、小渕政権時代には、その泡をあえて又盛り上げようと、公共投資の名目で、コップにストローを突っ込んで息を吹き込み泡が又若干盛り返したと、マスコミや、族議員は喜び囃し立てました。

 

 可笑しくはありませんか?

 

 ビールの泡が無くなったら、ビールだけの量に戻るだけではないですか!

ですから、バブルで膨れ上がっていた株価も地価も下がって当然ではありませんか。

そして、株価も地価もバブル前の状態に落ち着くのが自然の慣わしではありませんか?

 

 なのに、“株価地価の暴落は全てを政府の責任”と、バブルの後押しさえし、正しい現状分析も出来ないマスコミは、 “株価はバブル崩壊後の最安値!”と、喚き続け不況感を煽り立てるのはいい加減にしてください。

更に悪いことには、マスコミは、証券銀行或いはその関係に足を突っ込んでいる経済評論家(?)を動員します。

 例えば、植草一秀氏(野村総研主席エコノミスト)、リチャード・クー氏(野村総研主席研究員)、森永卓郎氏(UFJ総合研究所部長兼主席研究員)、紺谷典子氏(日本証券経済研究所主任研究員(「女性投資家の会」代表)、など等です。

これらの方々が自分の所属会社に不利になる発言をするでしょうか?

それに、主席とか主任研究員だのご立派な肩書きを有した方々が、バブルの危険性を予知出来ず、その崩壊後の今も、バブルを懐かしんでいるのは、奇奇怪怪な事態現象であると思います。

 

 そして、又、バブル崩壊後の銀行幹部のとんでもない行為「クロス取引」に何の非難お声も上げなかったのですから。

10月9日のニュース・ステーションに出演した元長銀取締役箭内昇氏の著書「メガバンクの誤算」(中公新書)(番組中で久米氏が紹介しその内容に驚愕)には、“銀行トップは経営責任を問われぬようにクロス売買益を使ってひそかに不良債権処理を進めようとしたが、実態は典型的な問題先送りであり、結局は自滅行為になった。”と書かれています。

 

 その項目を以下に抜粋します。(赤字下線処理は私が施しました) 

クロス取引の落とし穴

日本のメガバンクの格付の低い題4の理由は、保有株式のリスクが高いことだ。20019月中間期、日本の大手銀行は株式含み損が4兆円以上と推定された。20023月期は株価がやや持ち直したものの、それでも1.4兆円の含み損を抱える。日本の銀行は20019月より有価証券の含み損を自己資本から控除することが義務付けられたため、ますます自己資本を減少させることになるのである。

 日本の大手銀行の保有株式はリスク資産の約9%、自己資本の実に150%にも達する。

欧米諸国の銀行では自己資本の30%以下であることが多く、日本と同様に取引先の株式を大量に保有するドイツの銀行ですら自己資本の65100%であり、わがメガバンクは世界の中で突出している。その分、今後とも株価変動リスクが大きい。

 もちろん、日本の銀行が大量の株式を保有しているのは取引先との持ち合いが最大の理由だが、バブル崩壊後不良債権処理のためにクロス取引で売却益を出し続けたことも大きな要因だ。クロス取引とは、たとえば簿価300円、時価900円という保有株式を市場で売却して600円の売却益を得ると同時に、あらためて900円で同じ株式を買い戻す方法である。収益の確保と持ち合い関係の維持という一石二鳥の方法だが、一方で買い戻し後の簿価が膨れるという大きなマイナスがある。この例だと、300円だった簿価が900円へと一気に3倍も膨れ上がる。銀行の保有株は取得時期が古いため簿価はかなり低かった。それがこの10年間、不良債権処理の原資として含み益が残っている株式を根こそぎクロス売買したため、簿価が水膨れし、株価下落とともに逆に含み損が拡大したのである。クロス売買は一度やったら止められない蜜の味だ。銀行トップは経営責任を問われぬようにクロス売買益を使ってひそかに不良債権処理を進めようとしたが、実態は典型的な問題先送りであり、結局は自滅行為になった。

 日本の大手銀行は最近になってようやく株の持ち合い解消に取り組んだが、その進展は遅い。政府も銀行の保有株を買い取る目的で銀行等保有株式取得機構を設立したが、銀行にとつては簿価を膨らませてしまった株式を売却したとたん売却損が出ることと、買い取り対象株式が一定の格付以上に限定されていることなどから、その活用については疑問視されている。かつて巨額の含み益を持つ日本の銀行は日本株式会社の象徴でもあったが、今は一転して巨額の含み損を抱える銀行が低迷する日本経済の象徴になった。

 今もって、箭内氏以外にこの銀行トップの犯罪的行為に非難の声を上げた経済評論家を私は知りません。

クロス取引をせず、株を売った金で、不良債権処理をしていれば良かったのではありませんか!

なのに、いんちき評論家達はこのような指摘をしませんでした。

そして、今、政府の無策と叫んでいるのです。

可笑しくはありませんか?

 

しかも、この土地バブルを煽ったのは、銀行ではありませんか!?

箭内氏は、次のようにも書かれています。

……一方では伝統業務の限界を認識し、70年代末ごろから真剣に証券業務への進出を試みたことも事実だ。だが、結局は証券会社に押さえ込まれて中途半端な進出にとどまるという惨めな敗北に終わった。バブルは、証券業務進出に失敗し、行き場を失った大手銀行が再び貸し出し業務にのめり込んでいったとどの詰まりでもあったのである。……

 更には、

 70年代に銀行などが出資して設立した住宅金融専門会社(住専)は、バブル時代に猛烈な不動産融資に走って不良債権の山を築いた。ほとんどの住専社長が大蔵省OBだったこともあり、銀行は住専を格好の取引先として大量の貸付金を押し込み、住専はあふれかえる資金を手当たり次第、不動産やリゾートにつぎ込んだのだ。まさに大蔵省と銀行が二人三脚で築いたバブルである。……

 こんな銀行にどっぷりと漬かっていた方々が、今更なにをおっしゃるのでしょうか?と思いませんか?

 

 そして、このバブル発生の背景を別な面から、社会システム研究会代表の斉藤恒孝氏は、『論座(2002.11)』「いまこそ日本の土地政策を見直せ」の中で次のように書かれています。

 バブルに火を付けたと評されるのが、国土庁大都市圏整備局が855月に発表した「首都改造計画」である。そこでは「東京大都市圏の事務所床需要で見ると、今後も高い需要が見られ、東京都区部においてだけでも昭和752000)年までに約5000ヘクタール(超高層ビル250棟に相当)の床需要が発生すると予測される」と述べられている。

 折しも、香港の中国への返還が迫るにつれ、「事務所が香港から東京に移転してくるのではないか」「うまくいけば東京が世界の金融センターになれるのではないか」という期待が広がっていただけに、この予測は地価高騰に対するお墨付きのように受け止められた。

いまから振り返ると、表面的な土地不足は、限られた市街化区域内に居住と業務の機能を押し込めようとした官庁による規制が原因だつたといえる。少なくとも、この時点で、市街化区域という制度と運用を見直すべきであったのだ。

 こんな間違った期待だけの予測で踊らされた土地ブーム、其れに伴う地価の高騰は、予測が外れた時点で早急に修正されてしかるべきです。

更に、このとんでもない御宣託にあやかって膨れ上がった経済機構(ゼネコン、流通など)は、その規模を縮小すべきなのです。

そして、斉藤氏は右の表も掲げています。

このグラフを一見すれば、(GDPの因果関係はともかく)地価、株価は、バブル前の値段にまだまだ戻っていないことが分かります。

そして、戻るのが正当だと思います。(バブル前でも高すぎていたのですから、尚のことです。)

 

 そして、この絶頂期89年の株の時価総額(630兆円)が、現在248兆円に下がったためにその差額(382兆円)、地価総額は、(斉藤氏の文から抜粋して)ピーク時の90年の2455兆円から、2000年末の1535兆円に下がったため、“これらの差額の約1300兆円(=(630-382+2455-1535))が、小泉政権の無策により日本が失った財産である。”と、経済評論家の紺谷氏はテレビで喚き散らしています。

これら1300兆円はビールの泡ではないですか!こんなものを日本の財産とカウントするとは、紺谷氏は経済評論家と名乗れるのですか!?

 

 又、箭内氏の著書には次のような記述が出てきます。

 この長銀の巨額債務超過を見た大手銀行の経営者は、輸血だけで生き延びている企業はいずれ全損に近い損失をこうむる可能性が高いことと、そうした企業は時間をかけるほど傷口を広げるということを明確に認識したはずだ。しかし、結局この長銀破綻の教訓は生かされず、大手銀行はその後も死に体の関連会社やゼネコンなどに輸血を続けて不良債権額を膨らませた。

 

 そして、この「死に体のゼネコン」らは、銀行の体力を奪っているだけではないのです。

木村剛氏と田原総一郎氏との対談による『退場宣告(光文社発行)』にも次のような記述があります。

木村 地方の建設業の方が言っていたんですが、いま彼らの文句や怒りの声が、ある意味でどんどん大きくなってきている理由は、彼らのやっていた地方の二、三千万円の仕事まで中央の問題ゼネコンが取りに来るということなんです。たった二、三千万円ですよ。しかも自分たちがやらないで、結局値引きだけして、地元の業者にやらせたりするというのです。そんなことだったら、問題ゼネコンが出てこないで値段だけ下がったほうがまだまし。つまり、問題ゼネコンという中抜き産業が、地域に悪影響を及ぼしているという大問題があるわけです。これは基本的には、実際に工事をやる人たちが直接仕事を受注できるような環境にするべきだと思います。……

 更には、

木村 少なくとも中小企業の人たちが苦労している同じ制度の枠組みの中で大企業も

  競争しなければいけないと思います。とすれば、その肝は失敗した人は退場する

  ということに尽きます。その結果として、インキユベートした人たちが伸びてい

  くルートをつくってあげるということじやないですか。

   ゼネコン業界なんて本当にアンフェアという以外にない。問題企業は債権放葉

  を受けたりして生き延びているにもかかわらず、まだまだ給料だっていい。地方

  のゼネコンからしてみれば、たしかに自分たちだって公共事業をもらっているけ

  れども、その彼らから見ても「あいつらはずるい」ということになる。

田原 この間、週刊誌を見ていたら夏のボーナス一覧が出ていたんだけれども、ゼネ

コンのボーナスっていいんですよね。それと銀行。二百万円以上もらってますよ。

木村 そんなこと中小企業では考えられないでしょう。

田原 考えられない。

木村 中小企業はいま金利をドーンと上げられて潰されているんですから。でも、金利引き上げを通告している銀行の行員は、公的資金をもらっているんだけれども、彼らの方が、その中小企業の社長よりも高額の給料をもらっているんですよ。

田原 本当に不良債権で有名で、公的資金がいっぱい入っているゼネコンの社員が

二百万円以上もらっているんですよね。

……

木村……だからこそ私は、日本人のために日本のマーケットを健全にすべきだと思うんです。

こんな銀行や、ゼネコンは早々に退場してもらうべきではありませんか。

アンフェアな「死に体の企業」が、フェアに働き本来なら赤字にならないで済む中小の企業を圧迫して、その経営者達を死に追い込む事は止めてください。

「死に体の企業」こそが早急に死ぬべきです。

 

 ところが、前述のUFJ総合研究所部長兼主席研究員の森永卓郎氏は、“不良債権処理の前に、インフレにすべき” とニュース・ステーションに出演して発言しています。

何故こんな銀行関連の研究所に所属(森永氏のホームページに出ている彼の肩書きを、テレビでは紹介していないのです)している方を、テレビで発言させるのでしょうか?

 

 斉藤氏は、“地価はいまの3分の2まで下がる”とも記述し、又、次のようにも書いています。

国土庁と日本不動産鑑定協会が、標準的な一戸建て住宅の価格の世界比較をしているが、東京を100とするとパリは24、ニューヨークでも28という。外国では、親しい友人を家庭に招き家族ぐるみの付さ合いをするのが当たり前であるが、日本では家が狭くて遠いのでそれができない。住宅価格が値下がりし、高額な住宅のローンから解放されれば、生活も豊かになり、個人消費も伸びることは疑いない。さらに、少子化傾向も相当に改善すると思われる。

 バブルの時代に住宅を取得した人には、地価のさらなる値下がりはつらい話で怒りたくもなろうが、過去の住宅ローンが重い人には、現在の税額控除の拡充に加えて、低利融資や利子補給という政策も検討してはどうか。

 

 私にはいんちきと思われる経済評論家たちは、今のデフレを何とかインフレに修正しないといけないと騒ぎ立てていますが、可笑しくはありませんか?

政府が株価対策をして株価が上がりますか?

(小渕内閣時代に株価PKOとかを発動させてビールにストローで息を吹き込み泡立てして何の効果がありましたか?

いんちき評論家達は、もっと息を吹き込むべきだったと言っていますが、バカもいい加減にしろ!です。)

地価が上がりますか?

異常に高くなってしまった地価や株価がバブル前に戻ったり、パリ、ニューヨークよりも4倍も高い住宅も安く手に入るようになり、バブル前から世界一高い物価といわれていた日本の物価が下がることは良い事ではありませんか?

 

 政府が景気対策をして今まで効果がありましたか?

先の私文“日本の株価は未だ高い”にも抜粋させて頂きましたように、米上院予算委員会で補佐官(国家公務員)として勤務され、現在、経済産業研究所研究員の中林美恵子氏は、“米上院予算委員会での公聴会や上院本会議でも、財政政策が景気回復に無力だと主張する場面では、しつこいほど日本の例が引き合いに出されたものだ。”と 「論座2002.9」に書かれています。

 

 バブルは終わったのです。

いつまでもバブルの夢を追い続けるのは止めてください。

 

 今は不景気ではないのです。

バブルを離脱して、正常状態へと回帰しようとしているだけです。

 

 ですから、テレビに出演する方々はいたずらに不況感を煽ったりしないで下さい。

いたずらに国民に対して不況感を煽り立て、購買意欲をそぐような発言は止めてください。

偉そうに政府の無策と叫ばないで下さい。

そんな事は、只単に日本にとって全くの害虫である「族議員」を勢い付かすだけです。

 

 無駄な発言をするよりも、もっと(私の持論ですが)特に、テレビなどに出演する人は、個人消費にいそしみ、国民全体への消費意欲を沸き立てるよう努力することのほうが大切と思います。

 

 何故今の日本が、中国などアジアの各国の方々よりも裕福な生活が出来ているのですか?

もっと根本的なことをマスコミは探ってゆくべきではないでしょうか?


目次へ戻る